エンジニアリング

Elastic StackでIIoT(Industrial Internet of Things)を活用

IIoT(Industrial Internet of Things)により、製造業者は数千ものセンサーやデバイスからデータを取得することが可能になります。

製造プロセスを監視し、さらなる分析用に適切な測定値を導き出すには、それらのデータをまとめることが重要です。その主要な課題として挙げられるのは、データを収集して正規化することです。それを行うことで、予測分析または製造現場のセキュリティに活用することができます。

小規模な製造企業でさえ、何百もの機械と何千ものセンサーを備えた工場を複数運営していることがよくあります。新しいデータはミリ秒ごとに生成され、簡単にテラバイト規模にまで蓄積されますが、それらのデータを保存も分析もしないようでは何の価値も得られません。

Elasticを使用すれば、IIoTデータを収集、強化、分析することができるため、製造管理者は製造プロセスに関して詳細なインサイトを取得できます。
— Elasticのプリンシパルソリューションアーキテクト、Marco De Luca

それらのデータを大規模に収集できることが、重要な差別化要因となります。つまり、製造プロセスの最適化が可能になり、効率をより高められると同時に、より高品質の製品を製造できるようになるのです。

製造業者は通常、上記の一般的な課題に加えて、以下のうち少なくとも1つの課題に直面します。

  • 製造企業はイノベーションを推進しながらも依然として旧式の機械を多数保持しており、さらに今後数年はそのまま使用し続ける可能性があります。通常のライフサイクルは10年から20年以上にもなります。どのようにすれば、それらのレガシーマシンを最新の分析プラットフォームに統合できるのでしょうか。
  • 監視する必要のあるセンサー、自動運転車、その他のデバイスがあります。それらの全体的な観察のみが、予知保全や運用などに役立つ基盤となります。さまざまな種類のデバイスが、異なるテクノロジーを使用して通信し、異なるインターネット接続方法を使用しています。
  • お互いにやり取りできない多数の独自ソリューションがあります。どのようにすれば、それらのシステムからデータを取得し、他の機械のデータと相関付けることができるのでしょうか。
  • 一部の製造企業はすでに、新旧両方のシステムのすべてを監視するために、機械のデータを活用できるプラットフォームを構築する方法を考え始めています。運用またはメンテナンスのため、あるいは追加または新規のビジネスケースやサービスの構築のためなど、その目的は何であれ、どのようにデータを活用すればよいのでしょうか。

機械のデータを収集し、それを分析しようと取り組む企業には、多数の利点がもたらされます。製造プロセスを最適化できるだけでなく、製品の品質を高めることができます。データを収集し分析すれば、さらに多くのことが可能になります。

優れた設計の監視ソリューションと、予知保全があれば、コストを劇的に削減することも可能です。センサーデータからは、デバイスの状態や製造された製品の品質について多くの情報が得られます。さらに、リソースの消費も低減することができます。それを実証しているのがMMカルトンです。同社は原料の消費を20%削減しています。

IIoTデータ分析の基盤の構築

異種混合のデータセットを活用するためには、ニーズに合わせて拡張することが可能な個別の環境に、それらのデータセットを保存する必要があります。このユースケースに最適なのがElasticsearchです。多種のデータを大規模に保存できるだけでなく、機械学習機能を使用してそれらのデータを分析し、任意の方法でデータを可視化することができます。

関連するすべてのデータを各工場から収集できるようになれば、全体を監視して製造工場の効率を大幅に改善することができます。必要なすべての種類のデータをElasticsearchに保存し、Canvasを使用して複数の組立工場からのデータを組み合わせて単一の画面に表示することができます。これは、ライブデータに接続したプレゼンテーションのスライドを作成するのと同じくらい簡単です。

下記でその例をいくつか見ることができます。

Canvasで作成された監視用ダッシュボード

複数の組立工場の監視(概要レベルからデバイスごとの詳細レベルまで)

複数の異なる組立工場に関する概要レベルのビューは非常に便利です。しかし、各工場のさまざまな機械のパフォーマンスの状態も把握する必要があるでしょう。また、各ベンダーの異なるデータモデルを組み合わせ、相関付けることも必要になります。

Elastic Stackを活用する一般的なIIoTユースケース

以下に、IIoTデータの分析と監視にElastic Stackを活用する場合のユースケースをいくつか紹介します。これらの他にも、リモートから機械とやり取りすることで問題に自動的に対応するなど、多くのユースケースがあります。

予知保全につながる予測分析

センサーデータを使用することは、IoTデバイスの健全性の分析に非常に効果的です。空気圧や油圧、温度、電圧、速度、音、周波数、色または光の変化などのセンサーデータは、障害の早期警告メカニズムとして使用できます。近い将来に障害が発生することが予測でき、その情報に対応することができれば、コストの軽減に役立ちます。

また、センサーデータまたはデータ範囲のしきい値を知ることで、製造管理者は、障害の傾向の有無に関わらずコンポーネントを交換するような固定されたメンテナンスサイクルではなく、個別にメンテナンス計画を策定することができるようになります。結果として、意味のある個別のメンテナンス計画を策定できるため、コストと製造のダウンタイムを削減できます。

これを行うためには、障害につながる状況についてかなりの知識が必要になります。リアルタイムで一度に数百ものセンサーを観察し、これまでのイベントと比較することは、人間には困難な作業です。このタスクに最適なのが、機械学習です。センサーごとの異常を見つけることや、全センサーのデータを1つの健全性スコア結果に相関付けるなど、強力な機能が実現します。

不良品発生率またはスクラップ率の低減

その他の重要なKPIに、不良品発生率/スクラップ率があります。製造のどの部分が不良につながるのかを把握して、不良品発生率を低減することが重要です。予測結果から逸脱している製品の検出に役立つのが、Elastic Stackの機械学習ベースの外れ値検出です。センサーデータと、この検出機能を使用することで、迅速かつ簡単に問題を見つけることができます。

製造現場に関する機械学習ジョブを適切に設計すれば、最終的に、人間が介入することなく機械自身が最適化できるようになるというシナリオが実現します。

機械学習によって実現した分析を参照

機械学習ベースの外れ値検出により、通常では認識できない可能性のある製品品質メトリックを検出することが可能に

製造現場のセキュリティ

今日、IT関連システムのセキュリティが課題となっていることは誰もが知っています。中でも、製造現場のセキュリティの実装は非常に難しいことがよくあります。現在は、生産設備全体をインターネットから切断することで侵入を防ぐというのが一般的な概念です。

ただし、これはますます難しくなってきています。SPS(シーメンス社のSIMATICなど)上で稼働する「伝統的なIT」(たとえばSAP PPやPLMなどのERP)システムの影響の高まりにより、良いことも悪いことも含めて、直接的なコミュニケーションが実現します。需要はビジネスによって生成されます。すでに、3Dプリントやレーザーカットにより、MoD(マニュファクチャリングオンデマンド)の提供が実現しています。たとえば、任意のオンラインショップからのカスタマイズされた注文によってトリガーされる完全に自動化された製造プロセスがあるとします。そこでは、相互接続されたITから製造現場に悪影響がもたらされるという新たな次元のリスクが生じます。そのため、Industry 4.0への移行においては、製造現場のセキュリティが非常に重要なトピックとなります。Elastic SIEM(セキュリティ情報およびイベント管理)と、すべての関連データを収集できる機能を組み合わせて使用すれば、セキュリティイベントについて貴社のスマートファクトリーを監視することもできます。

異なるIIoTデータソースからの収集と分析をElastic Stackで実現

Elastic Stackには、かなり前から、必要とされる分析機能が実装されています。大変なのは、そのスタックに異なるデータソースからデータを取得することでした。

製造工場に存在しているさまざまなデータソースのすべてからデータを収集することは、1つの方法だけで実現できることではありません。複数のデータソースをまとめる必要があります。Elasticはリアルタイムのオープンなデータプラットフォームであるため、そのエコシステムを簡単に使用してすべてのタイプのデータソースを統合できます。

製造工場には、非常に古いシステム(Windows 95以前を使用して制御ソフトウェアを稼働させているなど)から、LinuxやOPC UAを使用する最新のテクノロジーまで、監視が必要なさまざまなシステムが多数あります。ここでは主に、以下のタイプのシステムについて説明しています。

  • IBM MQなどの製造制御ソフトウェア。これは工場内および工場間での製造プロセスを制御するために使用されます。
  • プログラマブルロジックコントローラー(PLC)。これは、 産業用制御システムで使用するために設計された独特の形式のコンピューターデバイスであり、センサーやアクチュエーターを制御する特殊用途の「産業用PC」です。たとえば、製紙業界で紙製品を製造する機械を制御したり、リフトやエスカレーターの制御も可能です。PLCで制御可能なユースケースは多数あります。
  • 産業用ロボット。たとえば、ドイツに本社を置く中国企業の子会社であるKUKAが製造しています。KUKAロボットには、KUKAロボットを制御するOPC UAサーバーが付随しており、製造現場の他のロボットやシステムとのインタラクションも可能です。また、OPC UAはインターネット経由でシステム間を相互接続することが可能なため、セキュリティの脅威にさらされることになります。このため、OPC UAの仕様においてセキュリティは重要な役割を果たすことになり、Elasticのような監視プラットフォームによる監視も必要になります。
  • センサーおよびその他の自律運転車またはデバイス。主に温度、湿度、速度、加速度、位置、振動、その他、それらの値を製造プロセスデータに関連付けるために必要なメトリックの測定に使用されます。たとえば、温度や湿度の変化はロボットのオペレーションに影響を与える可能性があり、より激しい振動が生まれ、それによってロボットに障害が発生したり、低品質の製品が製造される場合があります。つまり、センサーおよびロボットのデータは、顧客対応業務にとって重要になります。

PLC、MQTTブローカー、およびOPC UAサーバーからのデータ収集

これらのデータをほぼリアルタイムに収集するために、 Machinebeatを使用することができます。これはBeatのコミュニティであり、MQTTブローカーや OPC UAデバイスからデータを収集できます。そのMQTTモジュールでは、AWS IoT CoreやAzure IoT HubなどのさまざまなIoTクラウドサービスプロバイダーからデータを収集することもできます。

PLCデバイスからデータを収集するためには、ApacheプロジェクトPLC4XLogstashプラグインとして統合することができます。これにより、PLC4XをサポートするすべてのPLCからメトリックを収集できるようになります。PLC4XをElasticsearchと組み合わせて使用することの詳細については、ElasticのパートナーのCodecentricによるこちらのブログをご確認ください。

iiot-data-collection-overview-blog.png必要なすべてのデータのデータ収集、エンリッチメント、分析のためのソリューションの概要

Kibanaでデータを可視化

これらすべてのデータを所有すると、新たな課題が生まれます。そのような大量のデータの保存は、そこから価値を得ることができて初めて役に立ちます。その価値とは、何が起きているかについてのより優れたインサイトを取得することです。そこで役立つのがビジュアライゼーションです。以下のビジュアライゼーションの例は、IBM MQによって制御されている製造環境での複数のキュー間のメッセージングを示しています。レガシーの監視システムでは、監視対象に関する特定の知識が必要でした。Canvasを使用することで、その特定の知識を抽象化することができ、現在の状況に関する簡単な色分けされたフィードバックを得ることができます。

IBM MQメトリックのリアルタイムの監視とビジュアライゼーション

IBM MQメトリックのリアルタイム監視(カスタムのルールセットに基づいて色が変わる)

無料トライアルをお試しください

  1. IoT監視ソリューションの基盤を提供する、14日間無料のElasticsearch Serviceトライアルをご使用ください。
  2. GitHubにアクセスして、MachinebeatのLinuxまたはWindowsバージョンをダウンロードします。 
  3. ReadmeのConfigurationsセクションにある手順に従って、無料のOPC UAサーバーへの接続を構成するか、またはElasticのOPC UAサーバーに認証情報を入力します。または、手順に従ってMQTTブローカーを構成し、そのブローカー経由でさまざまなセンサーからデータを収集することができます。
  4. データの取得が開始されれば、独自のダッシュボードを作成してデータを可視化/分析します。データの可視化にはCanvasを使用することもできます。リアルタイムデータでプレゼンテーションのスライドを作成することが可能です。詳細については、ブログKibanaでCanvasを使いはじめるをご覧ください。

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