AIとElasticsearchの導入によって刷新されたエンタープライズサーチのプラットフォームにより、CiscoのWebサイトの閲覧者は詳細で利用しやすい検索結果を得られるようになりました。関連コンテンツへの直リンクも表示されるため、閲覧者の興味を引き続けます。
Cisco Systemsは1984年の設立以来、世界のネットワーク経済を強化するテクノロジーを提供してきました。Fortune 500企業の87%以上が、ネットワーキングハードウェアや、ソフトウェア、通信機器、その他のハイテクサービスおよび製品など、さまざまなCiscoのテクノロジーを使用しています。
コンテンツ検索は、Ciscoの多くの事業分野で重要な役割を占めています。たとえば、年間200万件を超えるサービスリクエストに対応するというビジネスクリティカルな業務を達成するために、11,000人以上のサポートエンジニアが、検索ツールを使用して膨大な量のドキュメントからコンテンツを探したりしています。
検索は、CiscoのWebサイト(Cisco.com)を利用するにあたって非常に重要な機能でもあります。データシートやユーザーガイドをはじめ、その他の技術情報、製品情報、企業リソースを含む膨大な数のWebページやドキュメントから情報を探す必要があるからです。
Ciscoのエンタープライズサーチ担当プリンシパルおよびクラウドアーキテクトのSujith Joseph氏は、検索支援や製品資料のことを、数千冊もの本の中から欲しいページや記事を探さねばならない広大な図書館になぞらえて、このように述べています。「今日のユーザーは、必要な情報にすぐにアクセスできることを期待しています。既存顧客や見込み顧客との関係を維持していくには、ソリューションやサービスの関連コンテンツを提示し続けることが不可欠です」
検索結果の精度だけでなく、それが返される速度もきわめて重要です。わずか0.5秒遅延しただけでも、Webサイトのクリックスルーレートや、サポートエンジニア対応時の顧客エクスペリエンスに影響が及ぶ場合があります。
Ciscoは、人工知能(AI)と最新のクラウドネイティブテクノロジーを導入することで、社内外のアプリケーションの検索機能を高度に強化したいと考えていました。すべてのアプリケーションを一度にアップグレードするのは効率が悪く、時間もかかることから、同社はまずカスタマーサポートとCisco.comの検索機能を優先し、その次にイントラネット検索などに着手することとしました。
Ciscoは以前からElasticテクノロジーを別の領域で活用していましたが、このたびElasticサポートチームの支援を受けて、Elasticをエンタープライズサーチプラットフォームの中核に据えることも検討を開始しました。
現在のCiscoの新しいエンタープライズサーチアーキテクチャでは、Elastic Cloud on Kubernetesで実行されるElasticsearchが中核的な役割を果たしています。ジョセフ氏は、特にTopic Searchというカスタマーサポートツールのパフォーマンスの向上を強調します。このツールでは、サポートエンジニアがカスタマーサービスリクエストへの対応時にドキュメントをすばやく検索できます。
今では、Ciscoのサポートエンジニアは、顧客の問題で発生したエラーメッセージを使用して、類似ケースをリアルタイムで検索しながら対応しています。Topic Searchを利用すると、類似のサポートケースや、製品のバグ、ナレッジベースの記事、社内のディスカッションフォーラムの中から、関連する情報が提供されます。この新たな検索機能により、Ciscoではサポートエンジニアの作業時間が月あたり5,000時間も節約されました。
Cisco.comの検索には、新しい検索プラットフォームが使用されています。これはAI駆動の検索ソリューションであり、Google CloudサービスとElasticsearchをベースに構築されたものです。AI(ニューラル質問生成)が組み込まれており、Cisco.comの検索機能によってCisco.comのテキストパッセージから作成される自動提案を強化しています。より詳細なQ&Aソリューションでは、テキストパッセージのハイブリッド検索機能(セマンティックおよびテキスト)も実装されています。
「検索クエリを事前処理できるので、ドキュメントから取得したテキストまたは段落を検索結果の一部として返すことができます。クリックすると、ドキュメントの当該セクションに直接移動できます」とJoseph氏は説明します。「以前の検索プラットフォームでは、検索結果として適切なCisco.comのWebページまでは返ってきても、関連性の高いセクションまではわかりませんでした。今では、そのようなプラットフォームから大幅な進化を遂げています」
同氏は、AIとElasticsearchによってエンドユーザーのエクスペリエンスが非常に向上することも強調します。「Elasticがバックエンドに送信したユーザーのクエリを、ディープラーニングモデルを使用して変更または事前処理することで、最も関連性の高い検索結果のページを生成できるようになったのです」
今では、検索クエリを入力すると、検索結果候補のドロップダウンリストが自動的に表示され、文字や単語が入力されるにつれてリアルタイムで更新されます。検索の意図を確かめるための一般的な質問も表示されるので、関連情報をより迅速に見つけられます。検索結果のページには、製品や、ビデオ、その他の推奨コンテンツのリストも含まれます。
検索機能が刷新された結果、クリックスルーレートから判断されるユーザーエンゲージメントが大幅に向上し、検索クエリの応答時間も73%高速化して、ページの読み込み中に興味を失われてしまう可能性を減少させることができました。
また、Joseph氏は、新しい検索プラットフォームのデプロイを支援したElasticチームの役割も強調しました。彼はこう言います。「Elasticのチームには本当に助けられました。プロジェクトの開始時に、サポートチームがあるのとないのでは、事情がまったく違ってきます。Elasticチームのおかげで、方向性の確認ができました」
新しい検索機能がカスタマーサポートとCisco.comにロールアウトされた後、Ciscoの検索担当チームは、Ciscoのイントラネットを含む社内外の50を超えるアプリへのロールアウトを実施しました。さらに、刷新されたCiscoの検索プラットフォームにもAIツールを複数追加しました。カスタマーサポートの分野では、AIモデルを使用してカスタマーサポートチケットから自動的にクエリを生成できるようになりました。そのクエリはElasticに送信され、推奨されるコンテンツが顧客にすぐに提供されるというしくみです。このように、同様の状況に遭遇したエンジニアの対応を基にした予測を行うことで、時間を節約し、問題をより迅速に解決できます。イントラネット検索の分野では、AIモデルと、従業員用サポートコンテンツの埋め込み情報に基づくセマンティック検索を利用して、Q&Aの質の向上と自動提案エクスペリエンスの強化が行われました。これには、Elasticsearchの高密度ベクトル検索機能が活用されています。
CiscoのML/AIおよび検索担当ディレクターであるPrem Malhotra氏は、次のように述べています。「Elasticは、多様な検索ソリューションを作成できる機能豊富な環境です。検索機能を進化させるにはセマンティック検索をソリューションに組み込むことが重要であり、Elasticはこれによく適しています」
「当社の社内外の検索ワークロードの多くが、Elasticsearchを基盤として構築されています。Elasticsearchはレジリエンスとスケーラビリティに優れ、数年にわたって強力な基盤として利用できます。そのうえ、TOCも管理しやすいです。最近リリースされたネイティブAI機能もすばらしいものでした。あの機能を使用すれば、統合とAIOpsをさらに合理化できます」 ‐ Li Tan氏、AIおよび検索担当ディレクター