エアバスでは、航空会社から保守・点検会社、各国の関係当局、航空機製造に携わる調達先にいたるまで、すべての取引先にカスタマーサービスがサポートを提供しています。対象となる内部、および外部ユーザーの数は80,000ほどで、ドキュメントの数は新しいモデルの機体が製造されるたびに増え続けてきました。そこでエアバスは2003年より使用されていた社内アプリケーションを刷新し、膨大で雑多な航空機のドキュメントをデジタル化することを決断しました。こうして立ち上げられたのがADNS(Advanced Data Navigation Services、高度データナビゲーションサービス)プロジェクトです。1分間に3,000件のリクエストを2秒以内に処理する性能と、新たなコンサルティングポータルを2年以内に立ち上げるという2つの目標が設定されました。ADNSプラットフォームのレスポンスタイムを向上させ、開発期間の短縮を実現するにあたり、エアバスが導入したのがElastic Stackでした。ユーザーのアクセス権限を適切に管理する、プラットフォームの稼働状態を監視するといった最新のテクノロジーと豊富な機能を備えていたためです。
フランス、トゥールーズ近郊のブラニャックに本社を置くエアバスは、欧州航空機製造の最大手企業として世界中の航空会社に製品やサービス、ソリューションを納入しています。取引もグローバルで、世界180か所の事業所が直接調達を行う取引先は12,000件に上ります。2017年末までの納入数はのべ10,926機で、世界のすべての大陸に納入されました。そのすべてに、運行と保守、点検に携る膨大な関係者のための文書が作成・添付されています。
ADNSプラットフォームを新たに構築するという任務に取りかかったフランソワ・ベダン氏とITチームは、エアバスのカスターマーサービス受託企業をはじめ、航空機のドキュメントを使用する広範な関係者や顧客と協働してプロジェクトを進めました。アジャイル開発方式が採用され、各プロジェクトのステージごとに関係者による目標の合意と検証が行われました。ADNSプロジェクトが完成した現在、この洗練されたドキュメント検索とコンサルティングのプラットフォームはエアバスのカスタマーサービスによるSLAの履行に大きく貢献しています。
エアバス ADNSプラットフォームは、航空機営業と納品の部門を縦断して構築されています。また、航空会社と保守管理部門が、毎回の着陸後のメンテナンスや定期的な機体の分解点検作業中に必要とする情報を一元的に格納しています。6TBものサイズがあり、今後も増加し続ける文書に対する検索と、ユーザープロフィール/リクエストに応じたアクセス権を厳格に管理するADNSプラットフォームの目標は、すべてのリクエストに2秒以内にレスポンスを返すことです。
優れたパフォーマンス水準をADNSプラットフォームで確実に実現させたいと考えたプロジェクトマネージャーのベダン氏と彼のチームは、検索とインデックス処理で高い評価を受けるElasticsearchを導入しました。ADNSをリアルタイムなパフォーマンスと高可用性を備えたインフラとして構築する理由は、エアバスが提示する24時間、365日のカスタマーサービスコミットメントを保証するためです。SLAに準拠した確実なインフラと切れ目ない製造プロセスを提供するという約束を履行するため、エアバス ADNSは開発のスタート時からElastic Stackのプラチナライセンスを選び、利用してきました。サブスクリプションで利用できるElastic Stackのオプション機能は、ADNSプラットフォームの可用性とアクセスベースのセキュリティを実現させました。
ADNSの運用インフラは、アクティブ・アクティブで冗長化された2つのデータセンターで構成され、Elasticsearchノードが25台ずつ設置されています。
ITチームがKibanaのダッシュボードで視覚的に表示される情報からADNSの稼働状態を把握できることで、各機能は最適な状態に保たれます。
ElasticsearchがADNSの主力エンジンに選ばれた理由は、リアルタイムなインデックスと全文検索機能です。既存の検索ソリューションに代わってElasticsearchを導入したことで、何でも簡単に検索できるようになりました。エアバスが1970年代に最初の航空機を製造してから現在まで、仕様や形式を頻繁に変更しながら蓄積されたデータベース、および構造化されていない多種多様な文書の数は20億件を上回ります。それでも、ADNSならキーワードを入力するだけで検索できます。
Elastic Stackを採用したADNSのテストバージョンは14か月で開発され、この時点でいくつかの機能がすべてのユーザーに公開されました。全機能を搭載したADNSのベータバージョンが公開されたのは20か月後のことです。現在、ADNSプラットフォームは完成し、本番環境で全面稼働しています。
フランソワ・ベダン氏と彼が率いるITチームは設計から稼働まで2年以内という短期間での開発で、エアバス航空機に関する6 TBものドキュメントを効率的に検索する洗練されたプラットフォームを完成させました。現在、エアバスのポータルではすべてのリクエストを2秒以内に処理し、キーワードとの関連性の順位付けも行われます。膨大な数の内部/外部ユーザーはアクセス権に応じた情報を利用することができます。
今後も新たに航空機を納入することで文書は増大します。しかし、Elastic Stackのスケーラビリティとフレキシビリティのおかげで、ADNSはすばやく簡単に増大データに対応、吸収することができるよう設計されています。