複雑な検索要件を一元的に扱える統合検索基盤
テキスト検索・ベクトル検索・ハイブリッド検索に加え、スコアリングの調整や条件検索、メタデータの絞り込み、Aggregation などを一つの基盤で扱えるため、複雑な検索要件にも一貫した環境で効率的に対応できる。
検索基盤統合によるコスト50%超削減と運用負荷の軽減
テキスト検索とベクトル検索のシステムを Elastic Cloud に統合したことで、コストを 50%以上削減。さらに、これまで個別に管理していたベクトル検索の運用作業がマネージド化され、総合的な運用コストの削減にもつながった。
RAG・AI エージェント開発を支える柔軟な拡張性
Elastic が幅広い検索要件に対応できるため、RAG や AI エージェントに必要なコンテキスト検索機能も基盤を作り直さずに実装でき、大幅な工数削減につながった。
FRAIM、AI時代のナレッジ検索基盤をElasticsearchで構築
FRAIM株式会社が提供するクラウドドキュメントワークスペース「LAWGUE(ローグ)」は、文書作成を効率化するツールとして企業、法律事務所、官公庁・自治体などさまざまな現場で導入されている。契約書を入口としながら、規程・規約・マニュアル・開示文書など多様な文書を「再利用可能なナレッジ」へと再構成することを目指してきた。文書を意味単位で構造化し、検索性と再利用性を高めることは、「LAWGUE」の根幹を成す思想である。AIエージェントなどを用いる高度なAI時代において、自然言語クエリ、文書構造、メタデータ、業務文脈といった多層の情報を横断し、ユーザーの求める適切なナレッジやコンテキストを取得するための検索基盤が不可欠であり、より一層重要となる。こうした要件を満たすため、同社は柔軟で拡張性の高いElasticsearchを検索基盤として採用している。
文書作成と活用のための「実務ナレッジ基盤」の開発
企業には膨大なビジネス文書が存在するものの、検索性や再利用性の低さから、それらを十分に活用するため苦戦を強いられているケースは非常に多い。文書は保存されていても、その構造自体が検索や再利用を前提に設計されておらず、目的の情報に辿り着くまでに多くのステップを要することが大きな課題となっていた。さらに、参考となる文書が運良く見つかった場合でも、担当者はインデントや番号付けの整合性、章節構造の調整、表記揺れや用字用語の統一など、細かな整形・校正に多くの手間を抱えてきた。
FRAIMはこうした課題に対し、「文書作成を、再発明する。」というビジョンのもと、文章を意味単位のパーツとして扱い、検索や再利用がしやすい形へと再編成するサービスとして「LAWGUE」を開発・提供している。
「LAWGUE」は AI を活用した編集支援や校正アシスト機能を備え、整形・校正に伴う作業負担を大幅に軽減すると同時に、文書を単なる保管物ではなく実務で活きるナレッジへと引き上げる基盤として価値を提供している。
文章をパーツとして扱うアプローチにより、過去に作成されたドキュメントや文章断片だけでなく、それらに紐づくメタデータや文脈、そして利用傾向なども整理して蓄積でき、多面的に再活用可能なナレッジ資産として扱えるようになる。将来的には、これらの情報同士の関係性をより体系的にモデル化し、ナレッジグラフやオントロジー的な構造へ発展させることで、文書活用の幅はさらに広がっていく。
ユーザーが求めるナレッジに最短で辿り着けるようにすることは、「LAWGUE」をはじめとするFRAIMの重要なミッションの一つです。Elastic は多様な検索要素を統合して扱えるため、この到達効率を支える検索インフラとして非常に頼れる基盤です。
別企業で機械学習エンジニアとしてキャリアを積んでいたFRAIM 開発部 VP of Machine Learning リード機械学習エンジニアの水野多加雄氏は、自然言語処理・音声解析・画像解析など多様なプロジェクトを経験してきた。幅広い領域に触れる中で、画像・音声といったインターフェース技術も価値を生み出していることを理解しつつ、自身は「思考・知識」に直接関わる自然言語処理や、膨大な情報の中から有用な知識へと導く検索・推薦技術の実務的な効果を、経験を通じて強く実感するようになった。
そのような背景を経て、2021年に副業・業務委託としてFRAIMに参画し、2022年に正式入社。現在は同社の機械学習モデル、検索技術、LLM/AIエージェントの開発責任者を務めている。
複数の検索システムをElasticsearchに統合し、多様な検索を実現するとともに50%以上のコスト削減を達成
水野氏は入社後、テキスト検索とベクトル検索が別々の仕組みとして運用されており、特にベクトル検索は独自の機構で実装されていたため、検索性能やスケール時のコストに課題があるとして、ベクトル検索基盤の抜本的な見直しに着手した。そこで複数の代替技術を比較する中、既にテキスト検索で利用していた Elasticsearch のクラスタに統合することで管理・開発コストを大幅に削減できる点に着目し、パフォーマンステストによって kNN search が実用的な速度で動作することも確認できたため、Elasticsearch への統合を有力な方向性として検討を進めた。
さらに追加の比較検討では、ベクトル検索とフィルタリングを組み合わせたいニーズに対して、同一の検索 DSL 上で一貫した検索ロジック・スコアリングとして設計できる点、スケールや要件に応じて柔軟にインデックス設計 ができる点、日本語向けトークナイザーを含む解析処理をプラグインで拡張できる柔軟性といった要素を総合的に評価し、最終的にベクトル検索も含めて Elasticsearch に統合する方針を採用した。
この統合により、検索機能全体を単一基盤で最適化できる環境が整い、結果として従来の独自基盤と比較して 50%以上のコスト削減 を実現している。
クラウドとオンプレの両環境で一貫性を実現
FRAIM は Elasticsearch を自前で運用するのではなく、Elastic Cloud を採用することで検索基盤の運用負荷を削減しているという。マネージドサービスであるため、サーバー管理やインフラ保守にかかるコストを最小限に抑えられ、また必要に応じたスケールアウトやスケールアップも比較的容易に実現できる。これにより、開発チームはより検索品質の向上や新機能の開発により多くの時間を割くことができている。
また、FRAIM では官公庁・自治体向けにオンプレミス環境でのサービス展開も実施しており、ECK(Elastic Cloud on Kubernetes)を活用することで、クラウド版と同一の構成や設定を再現できる体制を整えている。これにより、クラウド環境とオンプレミス環境のいずれにおいても一貫した設計を維持しつつ、顧客の求めるセキュリティ要件やインフラ方針に応じて柔軟にデプロイ戦略を選択できている。
AI時代に求められる“多層情報の統合とコンテキスト抽出”をElasticで実現
「LAWGUEにおいて検索は、ユーザーから選ばれる理由となる重要領域のひとつです」と水野氏は語る。編集中の文書に応じて、該当するドキュメントや意味単位の文章パーツから過去の類似表現や関連ナレッジを自動で提示できるため、まず検討すべき候補がすぐに手元に揃う点が、実務の効率を大きく高めているという。
こうした検索体験を支えているのが、Elastic の柔軟な検索基盤だ。従来の BM25 や Transformer 系モデルを活用した近年の SPLADE や ELSER などの疎ベクトル技術、さらに密ベクトル検索といった多様な検索方式を採用できる。スコアリングの加重やスクリプティング、ブールクエリによる精緻な条件検索、メタデータを用いたフィルタリング、Aggregation による集約処理など、多様な検索シグナルを柔軟に統合できるため、ユーザー要件に合わせた検索ロジックを一貫したアーキテクチャで実装しやすい。これにより、ユーザーの声を反映した改善案や、新たな機能・サービス向けの検証をスムーズに進められる環境が整備されている。
水野氏は、検索品質を継続的に高めるため社内に「検索委員会」を立ち上げ、顧客ヒアリングやログ分析をもとに改善を積み重ねてきた。「Elastic は DSL の調整自由度が高く、検討した課題をすぐ実装に落とし込めます。試作と検証のサイクルを高速に回せるのは大きな強みです」と語る。こうした取り組みは、生成AIや大規模言語モデルが実務で広く普及する以前から継続しており、今ではAI 時代の高度な検索体験を支える基盤となっている。
これらの積み重ねは、RAG や AI エージェント開発にも大きく寄与した。通常であれば検索エンジンやベクトル検索基盤を一から構築し直す必要が生じるが、「LAWGUE」 には Elastic を中心とした検索資産が既に整っていたため、そのまま応用でき、開発工数を大幅に削減することができた。
AI エージェントなど高度なAI活用が進むほど、必要な文脈を正確に取り出す検索の重要性は高まっています。Elastic の柔軟な検索基盤は、そうした環境下で私たちの「文書を実務で活きるナレッジへ変える」取り組みを確かなものにする重要な支えになっています。
AI 活用が広がる今、ユーザーが求める文脈を素早く正確に取り出す検索基盤の重要性はさらに高まっている。「企業固有の文脈や組織構造、業務フロー、メール・チャット・コメントに残る意思決定の履歴といった、ドキュメント上に必ずしも明示されない情報まで踏まえた実務の文脈を扱える検索が、これからの時代には欠かせません」と水野氏は続ける。
Elastic の柔軟性と拡張性は、こうした実務文脈の統合や、今後の RAG・AI エージェントの発展を見据えた際にも、「LAWGUE」 やFRAIMの事業を支える確かな基盤になっている。