SOCリーダーの一日

セキュリティオペレーションセンター(SOC)のリーダーは、組織のセキュリティ運用の責任者であり、セキュリティアナリスト、エンジニア、その他の専門家からなるチームを率います。ところで、彼らは日常において具体的にどのような業務を行っているのでしょうか。
組織のサイバーセキュリティにおける中核を担うSOCリーダーは、その職務に伴うあらゆる複雑な問題に対処しなければなりません。有能なSOCリーダー(SOCマネージャー、またはセキュリティ運用リードとも呼ばれます)は、戦略、技術、チームのリーダーとしての責任をバランスよく担います。脅威検知および対応チームのさまざまな取り組みを調整し、ベンダーやパートナーのテクノロジー統合を管理し、組織の防御態勢と潜在的なリスクに関するレポートを経営陣向けに作成します。
大変そうに聞こえるでしょうか?そうかもしれません。しかし、これらはすべて日々の一連のタスクに落とし込まれています。それでは、SOCリーダーの一日に迫りながら、その役割をもう少し詳しく見ていきましょう。
SOCの概要
SOCは、サイバーセキュリティインシデントを24時間体制でほぼリアルタイムに監視、検出、対応するための組織の中枢です。サイバーセキュリティのすべてのプロセス、テクノロジー、運用を統合および調整します。SOCチームは、組織におけるセキュリティ体制の構築と保守を担います。
SOCはセキュリティエンジニア、セキュリティアナリスト、インシデント対応者、脅威ハンター、システム管理者で構成され、計画と予防から監視、検出、対応、コンプライアンス、復旧まで、あらゆる業務を扱います。
SOCリーダーの役割を定義する
簡単に言えば、SOCリーダーとはSOCの責任者のことです。しかし、それは具体的に何を意味しているのでしょうか。SOCリーダーの役割には、以下の責任が含まれます。
セキュリティ運用の監督として、インシデントレスポンス、セキュリティ監視、脆弱性管理などの、サイバーセキュリティチームの日常業務を管理する
最高情報セキュリティ責任者(CISO)、最高情報責任者(CIO)、またはセキュリティ担当バイスプレジデントによって伝えられた、確立された目標と長期ロードマップに基づいて優先順位を設定する
脅威情報の提供、自動対応、エスカレーション手順などの予防策を実施する
セキュリティツール、ポリシー、手順など、セキュリティに関するテクノロジースタックの実装と保守を監督する
セキュリティアナリスト、特にジュニアレベルのアナリストのメンターを務める
これらの責任を効果的に果たすため、優れたSOCマネージャーは、リーダーシップスキル、技術的ノウハウ、そしてサイバーセキュリティのベンチマークと実践への深い理解という3つの重要な特性を備えるべきです。
SOCリーダーは毎日、次のような問いを自らに投げかける必要があります。
自分のチームは、平均検知時間と平均復旧時間(MTTD/R)など、主要な指標を達成できているか?
私たちの組織は、最新の脆弱性やサイバー脅威に対して安全か?
私たちの組織にとって重要な資産は何か、そしてその資産を適切に保護しているか?
インシデントを検出し、迅速に修正するために、完全な可視性を確保できる適切なリソースとツールはあるか?
リスクを最小限に抑えるために、私たちが持っているツールとチームメンバーを最大限に活用していますか?
SOCリーダーとアナリストのためのツールとテクノロジー
防御すべき範囲が広く、かつ絶えず変化しているため、それぞれのチームメンバーはさまざまな防御用ツールを使用しています。そのツールの例を以下に挙げます。
セキュリティ情報およびイベント管理(SIEM)
セキュリティオーケストレーション、自動化、対応(SOAR)
クラウド検出と対応(CDR)
エンドポイント検出と対応(EDR)
拡張検出と対応(XDR)
SOC リーダーは、セキュリティに関するテクノロジースタックのツールが適切に実装および保守され、SOCチームがそれらを効果的に使用するようにします。
SIEM:全体像を把握
SOC リーダーはSIEM ソリューションを使用して、組織全体のセキュリティイベントを可視化します。多くのチームにとって、SIEMはセキュリティイベントを可視化し、調査し、軽減するための中央ダッシュボードです。
また、SOCアナリストはSIEMを使用してアラートをトリアージし、進行中の攻撃を調査し、被害が発生する前に脅威を阻止します。
SIEMは継続的な監視と詳細な報告機能を実現する優れたツールであり、コンプライアンス要件の遵守とシステムの最適化に特に役立ちます。
SOAR:SOCプロセスを合理化
SOCはSOARを使用して、インシデントレスポンスプロセスを合理化し、反復的なタスクを自動化し、修復ワークフローを管理します。
SOARは自動化を通じて、SOCリーダーの重要な指標の1つであるMTTRを大幅に削減します。さらに、SOARによりSOCプロセスが標準化されると、一貫した調査と応答が可能になるのに加え、あらゆる経験レベルのセキュリティアナリストのスキルを強化できます。
CDR:クラウドの可視化
SOCリーダーはCDRを使用して、クラウドネイティブアプリケーションのアクティビティ、セキュリティイベント、インフラの振る舞いを一元的に把握します。SOCアナリストは、CDRソリューションを用いて、さまざまなクラウド環境で脅威をプロアクティブに特定し、軽減し、攻撃経路を可視化し、予防措置を講じます。
EDR:エンドポイントの可視性を確保
EDRは、エンドポイントレベルでサイバーセキュリティの脅威に対処します。SOCリーダーはEDRソリューションを使用して、エンドポイントのアクティビティを詳細に可視化します。セキュリティインシデントをプロアクティブに特定して対処することで、EDRは、SOCアナリストが脅威の緩和の効率と速度を向上させ、重大な侵害のリスクを軽減するために役立ちます。
XDR:エンドポイント全体を俯瞰
SOCリーダーは、エンドポイント、ネットワーク、クラウド、その他のデータソースを包括的かつ統合的に可視化し、より複雑な脅威を検知・調査したい場合に、 XDRソリューションを活用します。XDRは、インシデント発生時において、アラートの優先順位付け、シグナルの相関分析、対応の迅速化を図るうえで、チームにとって重要な役割を果たします。
脅威インテリジェンス:セキュリティ体制を強化
SOCリーダーのチームは脅威インテリジェンスを活用して、脅威の全体像とその影響範囲を把握します。脅威インテリジェンスフィードは、脅威アクターが用いる戦術、技術、手順(TTP)に関する洞察をチームのSIEM(およびその他のツール)に自動的に取り込みます。SOCリーダーは脅威インテリジェンスを活用して、標的型攻撃を予測して対処し、セキュリティインシデントの発生確率や影響を軽減し、組織のセキュリティ体制を強化します。
SOCアナリストは、脅威インテリジェンスフィードを使用して、侵害の兆候を特定することで、脅威を検出し、優先順位を付けて対応します。脅威インテリジェンスは、セキュリティアラートの重要性を把握し、最もリスクの高いアラートから優先順位を付けて対処するために必要なコンテキスト情報をSOCアナリストに提供します。
SOCリーダーの責任
SOCリーダーは、SOCチームを管理し、組織の強固なセキュリティ体制を維持する責任を負っています。その業務には、インシデントレスポンスの指揮、SOCのパフォーマンスやツールの管理、セキュリティポリシーやワークフローの策定と実施、セキュリティ運用に関する報告などが含まれます。
1. チームの管理と指導
SOC マネージャーは、Tier 1、Tier 2、Tier 3 の SOC アナリストを監督します。
Tier 1 SOCアナリストは防御の最前線です。彼らはセキュリティアラートへの初動対応を行います。
Tier 2 SOCアナリストは、Tier 1 アナリストからエスカレーションされたインシデントを引き受け、複雑な復旧戦略を実行し、チーム間で複雑な対応作業を調整します。
Tier 3 SOCアナリストは専門家です。プロアクティブな脅威ハンティングを実施し、新たな脅威を研究し、非常に巧妙な攻撃を調査します。
SOCリーダーは、セキュリティアナリストなどを監督するだけでなく、ハンズオン体験や専門能力開発を通じて、セキュリティの脅威に合わせてSOC チームのスキルが伸びるようにします。SOCリーダーは多くの場合、SOC チームメンバーの採用、トレーニング、評価を行い、協力的で効果的なチーム環境を育成します。また、人員配置、スケジュール管理、明確なパフォーマンス期待値の確立も行います。
2. インシデントレスポンスの調整
SOCマネージャーは、インシデントレスポンスの取り組みを指導および調整し、迅速かつ効果的な解決を確実に行う責任を負います。また、インシデントレスポンスのフレームワーク全体を指揮しながら、SOCアナリストが迅速かつ効率的な脅威の検出と対応を実行できるようにします。
3. 脅威分析とインテリジェンス
最新の脅威アクター、攻撃手法、脆弱性について、テクノロジーとチームメンバーの知識を常に最新に保つことで、SOCリーダーはプロアクティブにリスクを特定し、それを軽減するために貢献できます。ここで重要なのは、脅威インテリジェンスフィードを統合し、SOCアナリストと連携してセキュリティインテリジェンスを収集し、重大な脅威への対応を優先順位付けすることです。
チームの目標を達成するため、SOCリーダーは人材、技術、予算などのリソースを調整して管理する必要があります。
4. 報告、文書化、指標の管理
経営陣に定期的に報告することも、SOCリーダーの責務の一つです。SOCのパフォーマンスや活動内容(およびセキュリティインシデント)に関する包括的な報告を、経営陣に確実に届ける必要があります。また、MTTD/Rなどの主要な指標を追跡し、規制監査に確実に対応できるようにしておく必要もあります。
おそらく、さらに重要なのは、SOCマネージャーがSOCの機能、プロセス、手順を継続的に評価し、改善して、その有効性を高めることです。
SOCリーダーに求められるスキル
SOCリーダーとして成功を収めるには、技術的な専門知識とリーダーシップスキルの両方が必要です。セキュリティツールに精通し、サイバーセキュリティのベストプラクティスを深く理解する一方で、ソフトスキル、コラボレーション、戦略的計画にも優れていなければなりません。
テクニカルスキル
SOCリーダーは、SIEM、SOAR、XDRなどのSOCワークフローとサイバーセキュリティツールについて深く理解しています。また、現在および新たに出現する脅威、脆弱性、攻撃の傾向について常に情報を把握しておくべきです。さらに、組織全体の環境、ネットワーク、システムに精通し、データのインジェストと拡張性フローを理解し、クラウドやハイブリッドの機能を学ぶ必要もあります。
リーダーシップとソフトスキル
優れたSOCリーダーに欠かせないのは、コミュニケーション能力、紛争解決力、チーム構築のスキル、そして日々の緊急対応と長期的な戦略のバランスを取る能力です。
たとえば、SOC マネージャーは、あらゆる対象者に技術情報を明確かつ簡潔に伝える必要があります。組織内の他のチームや関係者と効果的に連携し、SOCアナリストが最大限の能力を発揮できるように動機付ける必要があります。
見落とされがちなスキルの1つは、ストレス管理です。SOCチームは大量のアラートや潜在的な疲労に対処することが多いため、チームリーダーはどのような状況でもチームが落ち着いていられるよう、また意欲的に働けるようにすべきです。
SOCリーダーが直面する課題
SOCリーダーは、組織のセキュリティ対策において重要な役割を果たし、SOCアナリストが直面する課題を解決する存在です。しかしSOCマネージャーも、予算の制約、効果的なインシデントレスポンス、スキル不足への対処など、数多くの課題に直面しています。
アラート疲れの克服
SOCチームのメンバーは、アラートの膨大な量に圧倒され、本当に対応すべき脅威を見極めて対応することが難しくなることもよくあります。
ソリューション:
SOCリーダーは、プロセスとツールによりノイズを除去し、アナリストが真の脅威に集中できるようにすることができます。たとえば、AIを活動したセキュリティ分析はノイズを大幅に削減し、重要なアラートを優先することで、チームの時間と労力を節約します。
- SOCリーダーは、シフト勤務と人員配置のバランスを調整し、燃え尽き症候群の軽減を図ることができます。このサイバーセキュリティアナリストの燃え尽き症候群クイズで、チームに支援が必要かどうかを確認してください。
進化する脅威への対応
サイバー攻撃者は常に新しい手法を開発し、新たな脆弱性を探しています。そのため、SOCチームも常に一歩先を行けるよう対応していく必要があります。
ソリューション:
SOCマネージャーは、継続的なトレーニング、技術のアップグレード、部門間の連携に取り組むことで、積極的なセキュリティアプローチを採用する必要があります。
脅威の状況は常に変化するには、それに対応できる動的な戦略が必要です。このツールセットには、プロアクティブな脅威ハンティングとAIが含まれており、潜在的に高リスクなアラートを特定したり、アナリストがトリアージ、調査、レスポンスを行えるよう支援します。
ElasticがSOCリーダーの戦略的パートナーである理由
チームのマネジメント、技術的専門知識、戦略的な方向づけが組み合わさった、SOCリーダーが担う独自の責任は、組織全体のセキュリティ態勢にとって極めて重要です。SOCリーダーは、プロアクティブな脅威検知、効果的なインシデント対応、そしてサイバーセキュリティの継続的な改善を実現します。
Elasticは、包括的なセキュリティソリューションを提供するだけでなく、主要な課題への対応を通じて、SOCリーダーを支援します。Elastic Securityが、AIを活用したセキュリティ分析によってSOCリーダーの負担をいかに軽減できるかをご覧ください。
本記事に記述されているあらゆる機能ないし性能のリリースおよびタイミングは、Elasticの単独裁量に委ねられます。現時点で提供されていないあらゆる機能ないし性能は、すみやかに提供されない可能性、または一切の提供が行われない可能性があります。
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