セキュリティ分析とは?
セキュリティ分析の定義
セキュリティ分析とは、セキュリティイベントからのデータを収集、分析、活用して脅威を検出し、セキュリティ対策を改善することです。組織が持つ大量のデータと高度な脅威インテリジェンスを組み合わせて、標的型攻撃、内部脅威、持続的なサイバー脅威を軽減します。セキュリティ分析の重要な側面は、データ分析、プロアクティブな脅威検出、AIと機械学習、コンプライアンスのサポート、フォレンジック機能、および対応支援です。
セキュリティ分析の仕組み
セキュリティ分析は、複数のデータソースを使用して潜在的な脅威を検出し、プロアクティブに防御する多段階のプロセスです。
データを収集する
まず、攻撃面全体の可視性を確立します。これを実現するには、できるだけ多くのデータをインジェストし、効率的に格納します。格納する対象は、アプリやサービス、データベース、インフラストラクチャーなどです。
データを正規化する
異なるフォーマットで保存されたデータを比較するのは、難しいだけでなく非効率的です。解決策は、セキュリティデータを統一的に分析できる共通のスキーマにデータを正規化することです。
データを充実させる
コンテキストはセキュリティ分析において主要な役割を果たすので、データを充実させることが重要です。これは、脅威インテリジェンス、ユーザーコンテキスト、資産コンテキストなどの追加情報のレイヤーでデータを補完することを意味します。これにより、データとアラートがより有意義で実用的なものになります。
脅威を検出する
どんな脅威に対処するにしろ、その脅威がどこにあるのかを知る必要があります。AI、機械学習、その他の脅威ハンティングテクノロジーを使用して検出を自動化し、潜在的な脅威を迅速に発見しましょう。これにより、損害が発生する前に脅威や脆弱性をプロアクティブに検出することが可能になります。
疑わしいアクティビティを調査する
潜在的な脅威が検出されたら、疑わしいアクティビティを迅速かつ効率的に調査することが重要です。手作業による調査の代わりに、高度な検索、AI、アラートのトリアージなどのツールが、環境を詳しく調べて潜在的な脅威を見つけるために役立ちます。すべての調査を、共同のケース管理ツールで追跡する必要もあります。
すばやく対応する
疑わしい活動が検証可能な脅威となったのなら、セキュリティ分析の最後のステップはインシデントレスポンスです。脅威が確認されたら、攻撃が開始される前に阻止するための決定的なアクションを実行できます。
セキュリティ分析が重要な理由
セキュリティ分析が重要なのは、脅威をリアルタイムでプロアクティブに検出して特定できるからです。AIと機械学習は、脅威が進行する前にパターンと異常を分析することで、脅威を特定するのに役立ちます。さまざまなソースにまたがるセキュリティイベントの一元的なビューを提供することで、調査と対応の強化も容易になります。これにより、インシデントが発生した際に、より多くの情報に基づいた意思決定を迅速に行うことができます。
より広い意味では、サイバーセキュリティの回復力が向上します。これは、IT環境全体の全体的なセキュリティ体制を強化し、進化する脅威や攻撃手法に適応できるようにすることにより実現します。また、さまざまな規制機関のコンプライアンス要件を満たすことで、企業を保護します。
セキュリティ分析の利点
脅威検知と対応の高速化
セキュリティ分析により、複数のソースにわたるデータをリアルタイムで分析できます。つまり、潜在的な脅威が重大な損害を与える前に迅速に特定できるということです。高度なパターン認識と異常検知により補完される効果的なセキュリティ分析の実践により、平均検知時間(MTTD)と平均復旧時間 (MTTR) が大幅に短縮し、ビジネスと顧客に対するリスクが劇的に軽減されます。
運用コストの削減
脅威の検出、調査、対応にかかる時間が短ければ短いほど、時間とリソースの両面でビジネスコストを削減できます。これは、新聞の見出しを飾るような漏洩(よく耳にするようなビジネスの損失、罰金、評判の失墜につながる)だけでなく、貴重なセキュリティオペレーションセンター (SOC)のリソースを問題解決のために費やさねばならなくなるような、より小さなインシデントにも当てはまります。
運用レジリエンスの強化
攻撃が成功すると、会社全体の事業に影響が及びます。セキュリティ分析は、全体的なセキュリティ体制を強化することで、攻撃が成功するリスクを減らします。これにより、システムの可用性が維持され、事業運営がよりスムーズに進むことにつながります。また、コンプライアンスへの取り組みもサポートし、規制当局との問題を回避するためにも役立ちます。
情報に基づく意思決定
セキュリティ分析はデータ主導のインサイトをもたらします。これはセキュリティ投資のためのより詳しい情報を提供し、戦略を定めるために活用できます。包括的な情報を把握することで組織のセキュリティ体制を定め、効果的なセキュリティ分析によって、より多くの情報に基づいたリスク管理に関する意思決定が容易になります。
セキュリティ分析の主要コンポーネント
AIを活用したセキュリティ分析
AIを活用したセキュリティ分析により、セキュリティ運用チームが環境全体のデータを調査できるようになります。こうしたソリューションは、ネットワークトラフィック、エンドポイントのログ、ユーザーコンテキスト、クラウド遠隔測定など、複数のソースにわたるデータを監視できます。これらのツールは、可視化、アラート、機械学習、人工知能を適用して膨大な量のデータを分析し、他の手法では見逃される複雑なパターンや異常を検出します。
SIEMと同様に、AIを活用したセキュリティ分析もデータを関連付けることで既知の脅威を検出し、また高度な分析を適用することで異常な、そして潜在的に悪意のあるアクティビティを発見します。これらの機能を組み合わせることで、脅威の見落としが減り、ドゥエルタイムが短縮されます。
セキュリティ情報およびイベント管理(SIEM)
SIEMとは、企業のITインフラストラクチャー全体からデータを収集して正規化し、それを分析して脅威を検出し、自動化されたデータとユーザー主導のデータの両方の関係付けを強化する一元化プラットフォームです。リアルタイムの監視、脅威の自動検出、インシデント対応など、セキュリティ運用の中核となる機能を実現します。SIEMはSOCにとって重要なツールですが、その種類は多岐にわたるため、組織は脅威を効率的かつ効果的に検出、調査、対応するのに役立つツールを慎重に選択する必要があります。
ユーザーとエンティティの行動分析(UEBA)
UEBA(ユーザーとエンティティの行動分析)ソリューションとは、機械学習と統計分析を使用して、ITネットワーク内のユーザーやエンティティによって実行される異常な行動やアクティビティを特定するための、サイバーセキュリティのプロセスやツールのことです。UEBAの主な目的は、データパターンを分析し、一般的なユーザー行動を把握することにより、内部脅威、アカウントの侵害、権限の不正使用を検出することです。
UEBAは、ファイルアクセスパターン、ログイン時間、アプリケーションの使用状況などの、ユーザーおよびエンティティの動作を評価します。このデータから、特定のユーザーやグループの「正常な」行動を構成する基準を確立し、その基準を新しい行動と照らし合わせることで、異常な行動や潜在的に疑わしい行動を発見します。
脅威インテリジェンス
脅威インテリジェンスは、潜在的な脅威に対処するための重要なコンテキストを提供します。サイバー攻撃に関連する悪意のあるIPやファイルハッシュなどの侵害指標(IOC)を特定することで、SOCによる脅威の検出、優先順位付け、対応を支援します。さらに、脅威インテリジェンスフィードは、特定の脅威アクターが使用している戦術、テクニック、プロシージャ(TTP)に関するインサイトを提供できるため、組織は標的型攻撃を予測して対抗することができます。全体として、脅威インテリジェンスはセキュリティインシデントの可能性と影響を大幅に減らすことができます。
セキュリティ分析のユースケース
インフラストラクチャー、デジタル資産、運用を保護するには、堅牢なセキュリティ分析プロセスが不可欠です。業界を問わず、チームはセキュリティ分析を使用して、脅威の検出を改善し、インシデント調査を強化し、コンプライアンスをサポートしています。
継続的な監視
データとシステムを安全に保つには、すべてのセキュリティデータをリアルタイムで監視できることが重要です。これにより、ITインフラストラクチャー全体の可視性を維持し、潜在的な脅威を検出し、迅速に調査して、インシデントが拡大する前に対応できるようになります。また、活動と対応措置の監査証跡を提供することで、チームが規制要件を遵守できるようになります。これはセキュリティ分析によって、セキュリティ関連のデータ全体を継続的に監視することで実現し、攻撃面全体を明確に把握できるようになります。
自動的な脅威検知
自動的な脅威検知とは、テクノロジー、特にソフトウェアとアルゴリズムを使用して、人間の介入なしに潜在的なセキュリティ脅威を特定することを指します。このテクノロジーは、今日の組織が直面している膨大な量のデータと複雑な脅威の状況に対処するために不可欠です。自動的な脅威検知は、ランサムウェア、マルウェア、その他の一般的な攻撃にまで及びます。
内部脅威検知
内部脅威検知とは、組織のセキュリティを意識的または無意識的に侵害しかねない、組織内の個人によってもたらされるリスクを特定して軽減するプロセスを指します。こうした個人となり得るのは、従業員、請負業者、ビジネスパートナー、組織のシステムやデータへの内部アクセス権を持つその他のエンティティなどです。
脅威ハンティング
セキュリティ分析の一部として機械学習を使用すると、インフラストラクチャ内の弱点や脅威のハンティングを先回りして行えます。長年にわたるペタバイト単位のデータを活用することで、重要なインサイトを特定し、脅威インテリジェンスを活用して潜在的なリスクを発見、評価できます。
インシデントレスポンス
インシデントの調査とレスポンスを行うには、必要なデータやツールにチームがアクセスして、増大する脅威に協力して対処するできるようにするセキュリティ分析ソリューションが必要です。リアルタイム分析、ケース管理、自動応答などの主要機能により、セキュリティチームはインシデントの原因を迅速に特定し、その範囲を理解して対処できます。こうしたテクノロジー、自動化、チームワークの統合は、セキュリティインシデントを効果的に管理し、迅速に無力化するために不可欠です。
セキュリティ分析の実装
セキュリティ分析の実装は、必ずしも難しいことではありません。セキュリティ分析プロセスにはさまざまな手順がありますが、そのプロセスは適切なツールを選択し、ニーズに合った適切なユースケースを決定することにかかっています。
- 現在のセキュリティ態勢を評価する:まず、セキュリティ分析ソリューションの明確な目標とユースケースを設定し、次に既存のセキュリティギャップと課題を特定します。これが、実装の残りの部分を進めるための枠組みとなります。
- 適切なツールを選択する:ギャップがわかったら、その作業に適したツールを見つける必要があります。さまざまなセキュリティ分析ソリューションを検討し、サポートされているデータソース、分析機能、スケーラビリティなどを比較します。既存のセキュリティインフラストラクチャーとの互換性も考慮する必要があります。
- データの収集と統合を計画する:次に、データソースを決定します。ネットワークログ、エンドポイントデータ、クラウドサービスなど、関連するデータソースをすべてリスト化してから、これらのデータを収集する方法と頻度を決めてください。
- ソリューションの構成とカスタマイズ:データ統合を構成し、ダッシュボードとレポートですばやく可視化できるようにします。事前構築済みアラートルールと機械学習ジョブを使用して検出を自動化します。AIを活用した機能を取り入れ、ワークフローをサードパーティのツールに接続し、事前構築済みのプレイブックと自動化を活用してください。
- 担当者のトレーニング:セキュリティ分析ソリューションを使用するチームメンバーや、ソリューションが出力するデータを確認するチームメンバー向けにトレーニングを実施します。優れたツールは、チームがアラートを効率的にトリアージし、調査と対応を実行するためにに役立ちます。
- 継続的な監視と反復:セキュリティ分析で最大限の効果を得るには、分析ルールとしきい値を定期的に見直して更新する必要があります。ユーザーや関係者からのフィードバックを収集して改善できる箇所を特定し、新たな脅威調査に関する情報を常に入手することで、状況に応じて調整を行えます。
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