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星野リゾート: 経営情報の一元管理から 可視化までをELASTICスタックで実現 データ活用により運営力を最大化

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AT A GLANCE
  • 1台
    クラスタの数
  • 150MB
    ドキュメント総数
  • 250GB
    総データサイズ
3つの課題
  • 構築後10年以上が経過した既存システムが変化に対応できない
  • KPIの変化に対応できない
  • リスク対策の強化

情報のすべてを蓄積できる場所を作り、経営者が使用するダッシュボードや現場のスタッ フがより深い顧客のインサイトを得られるデータ・ディスカバリ・ツールを提供する

顧客満足度向上のための情報共有に3つの課題

1914年に星野温泉旅館として開業した星野リゾートは、創業から100年以上の歴史があるホテル・旅館運営会社です。現在、日本全国の35カ所に、ラグジュアリーホテルの「星のや」、温泉旅館の「界」、デザイナーズリゾートの「リゾナーレ」という3つのブランドを展開。2016年には、星野リゾートとして都心部に初進出となる「星のや東京」と、海外初進出の「星のやバリ」をオープンする予定です。

星野リゾートでは、「Hospitality Innovator」を目指すというビジョンに基づき、その土地や季節の魅力を再発見してもらえるサービスを創造し、滞在の楽しみとして磨いて提供する“おもてなし”という文化を世界に発信する取り組みを推進しています。そのための基盤となっているのが、年齢や性別、国籍や職位に関係なく、スタッフ同士が対等な関係で議論できるフラットな組織文化です。

大規模なホテルや旅館では、経営者・支配人を筆頭に、料飲部長、客室部長、フロント部長、営業部長などが続き、各部長の下にシェフや宴会担当、客室担当、フロント担当、営業・予約担当などが続く縦割りの階層型組織になっており、トップダウンのガバナンスを効かせた運営で顧客にサービスを提供しています。一方、星野リゾートでは、経営者、支配人、各部門が、お客様を中心とした等間隔のフラットな組織になっています。

その理由を、星野リゾート グループ情報システムの久本英司氏は、次のように語ります。

「サービス業は生産と消費が同時に行われるという特徴があり、サービス品質を維持するためにはサービスを行うスタッフ一人ひとりがお客様を前にした際に、常に経営判断を行えるスキルを持つ必要があります。また、顧客満足度と収益性向上を同時に達成しようとした場合、スタッフ全員が自分で考え、創造的な活動を行えなければなりません。フラットな組織文化が活動を支え、お客様との接遇ポイントすべてを”マルチタスク”で対応することにより、実現できると考えています。そのためにも経営情報の共有にはずっと取り組んできました」

マルチタスクとは、スタッフ1人ひとりが、調理、料飲サービス、フロント、客室清掃など、さまざまな業務のスキルを習得し、複数の業務を担当することで、少ない人数でも高品質なサービスを提供する働き方であり、顧客満足度と生産性の向上を目的としています。その一環として、正しい判断の指標となる「稼働情報」「生産性情報」「満足度情報」の見える化を推進していましたが、情報の見える化において3つの課題を抱えていました。

3つの課題とは、「構築後10年以上が経過した既存システムが変化に対応できない」「KPIの変化に対応できない」「リスク対策の強化」です。久本氏は、「BIツールが遅くて使えない、複数のKPIを組み合わせて分析するニーズに対応できない、基幹システムに直接アクセスしているのでリスクが高いなど、現場のニーズの高度化、変化対応力、リスク対策に大きな課題があり、アルゴリズムを探索する前の前の段階でした」と話しています。

経営情報の一元管理から可視化までをELASTICスタックで実現

星野リゾートにおける情報共有の最大の課題は、稼働情報、生産性情報、満足度情報が、 ばらばらに管理されているために、組み合わせて活用することが困難なことでした。そこ で、3つの情報を1つに統合し、経営情報を可視化することが必要でした。久本氏は、「必要 なときに、必要な人が、必要な情報に、簡単にアクセスできる基盤を構築することが必要だ と考えていました」と当時を振り返ります。

「情報のすべてを蓄積できる場所を作り、経営者が使用するダッシュボードや現場のスタッ フがより深い顧客のインサイトを得られるデータ・ディスカバリ・ツールを提供することで アルゴリズム探索を行います。“この情報が変化すると、こう行動しなければならない”という のがアルゴリズムであり、探索したアルゴリズムを次の行動に生かし、その結果をデータと して蓄積するPDCAサイクルの実現を目指しました」(久本氏)

このPDCAサイクル実現のための基盤構築に「Elasticスタック (Elasticsearch、Logstash、Kibana)」を採用しています。Elasticスタックを採用するに至 ったきっかけは、アクロクエストテクノロジー社の提案でした。久本氏は、「当初は、ブッ キング(予約)エンジンの開発を依頼していたのですが、PDCAサイクル基盤の話をしたと ころ、Elasticスタックによるシステム構築が提案されました。そこで、プロトタイプを構築 し、Elasticの可能性を確認しました」と話します。

システム構築プロジェクトでは、まずは開発チームと現場のスタッフで、ビジネスの把握や 可視化のビジョンを共有し、マインドマップでシステム全体のイメージ図を作成しています。 次に、必要最小限のダッシュボードを作成し、状況に応じた仮説検証を実施。さらに数カ月間、システム構築、計測、学習のフィードバックループを繰り返し実践することで、PDCAサイクル基盤を構築しました。

今回、構築されたPDCAサイクル基盤では、基幹システムやブッキングエンジン、稼働率や RevPARなどのビジネス上のKPI、システム・アプリケーションのログなど、すべてのデータを Logstashで収集・整形し、Elasticsearchに登録して、保存・管理を行います。Elasticsearchに 登録されたデータは、高速に検索・分析を行うことが可能で、分析された結果は、Kibanaで容易に可視化できる仕組みになっています。

データの可視化で顧客満足度と生産性を向上

ELKを導入したことで、たとえばチャネル別予約室数のグラフにより、キャンセルリスクの高 い予約時期やチャネルを把握できる可能性があると考えています。星野リゾートは、自社サ イトや電話、外部の旅行予約サービスなど、複数のチャネルから予約ができますが、この予約状況がチャネルごとに色分けされ、グラフ化されています。このグラフにより、どの時点で予約数が急増するのか、キャンセルが増えるのかなどが一目で把握できるのです。

またチャネル別積み上げブッキングカーブのグラフでは、チャネルの配分比率が正しいかど うかが常に把握できる状況になっています。これにより、たとえば団体客の予約のキャンセルが発生する確率の高い案件を明らかにすることもできます。

サイト会員数の推移のグラフでは、オープンから順調に右肩上がりで会員数が増えている のか、どれだけの会員がリピートしているのかなどの情報を分析できます。久本氏は、「こうしたグラフを作成することで、データの可視化を推進し、顧客満足度と生産性の向上に生かしています」と話します。

一方、技術的観点から見たElasticスタック導入の最大のメリットについて久本氏は、次のように語ります。「もともと独自開発の仕組みを長く使っていましたが、そこで出てきた問題を解決できたことは最大の効果です。たとえば以前のシステムは、RDBをベースにしていたので、データ量が多くなるとデータ検索の速度に問題が発生していました。Elasticは、データ量がどれだけ増えても、スキーマレスで高速にデータを活用できます」と話します。

また豊富なAPIにより、複雑な集計や分析を手軽に行えることもメリットの1つです。これにより、外部のシステム開発会社に開発を依頼することなく、自社内で短期間に必要な機能を開発し、データを可視化し、迅速にPDCAサイクルを強化できます。久本氏は、「マーケテ ィング担当者とKibanaの画面を見ながら、いかにデータを可視化すれば使いやすくなるかを検討できたるのは大きなメリットでした」と話しています。

分析は自動化し、顧客サービスの最大化を目指す

今後、星野リゾートでは、Watcherによるアラートの配信やTimelionによる時系列分析、Apach Sparkなどのミドルウェア連携による機械学習などの機能を拡張する計画です。 また、マーケティング分析だけでなく、経営指標をリアルタイムに可視化する「ビジネス・バ リュー・ダッシュボード(BVD)」やセキュリティやコンプライアンスを監視する「セキュリティ情報・イベント管理(SIEM)」へと発展させることも検討しています。

「現場の運営力を最大化するために、経営情報を現場のスタッフに与え、問題をその場で解決できる体制を確立してきましたが、お客様にもっと大きな価値を提供できるのではないかと考えています。そのためには、現場のスタッフに必要な情報を提供するだけでなく、 経営判断そのものを現場に提供できる情報基盤が必要です。この仕組みをElasticで実現できるのではないかと期待しています」

(久本氏)

また今回、需要予測や稼働予測の見える化を実現していますが、今後さらにアルゴリズムを拡張することで、稼働調整やリソース調整を自動化することを目指しています。久本氏は、「 稼働調整やリソース調整の自動化により、生産性や満足度がどれくらいで、どれくらいの利益につながるかを分析することも期待できます。こうしたサイクルにより、アルゴリズム自体を成長させることができるのではないかと思っています」と話します。

今後の期待について久本氏は、「これまでは、情報を分析し、経営の意思決定を支援するのが人の仕事でした。今後は、意思決定支援は機械に任せ、意思決定そのものと、お客様に接する時間を増やしたり、より一層の感動を与えるサービスを創造したりすることにリソースを割くことが重要だと考えています。その基盤としてElasticスタックは今後も重要であり、アクロクエストテクノロジー社とElastic社には、引き続き迅速で手厚いサポートを期待しています」と語っています。

Elasticスタックを使ってデータを可視化することで、顧客満足度と生産性の向上に生かせている。データが増えても高速に活用できる点が良い

(久本氏)
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